はじめに:TENETとは何か?
クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET』は、「時間の逆行」をテーマにしたSFスパイアクションです。
物語の中では、ある物質が「時間を逆行して動く」という斬新な概念が登場します。
この作品は単なるエンタメではなく、因果関係・システム・フロー制御といった技術者にとって非常に興味深い示唆を多く含んでいます。
時間の逆行とは?:一種の「逆フロー制御」
映画に登場する逆行する物質(エントロピーが反転された物体)は、時間を「前ではなく後ろに」進みます。
これはシステム思考の中でいう「プロセスの逆流(リバースフロー)」や「時系列の非直線的管理」に相当します。
例としては:
- ロールバック処理(データベースの巻き戻し)
- Gitの
revert
やreset
コマンド - フロー制御におけるエラー時の巻き戻し処理
映画の世界では物理現象が逆行しますが、私たちの世界では情報や状態をどう巻き戻すかが焦点になります。
システム思考で見るTENETの構造
TENETをシステム図で見ると以下のような構造が浮かび上がります:
- 要素(エージェント):順行者・逆行者・装置
- ループ構造:未来が過去に影響し、過去が未来に影響を与える
- ボトルネック:情報の欠落が誤判断を生む(例:逆行中の人物が誰か分からない)
- 制御ポイント:回転ドア(時間反転装置)が“システムの切り替え点”に相当
このように、物語は因果関係を循環的に組み立てています。これはシステム思考におけるフィードバックループの視点と一致します。
実世界への応用:時間と情報の流れをどう扱うか
映画のように時間を逆行することはできませんが、**「情報が未来から過去に届くような構造」**は実際の業務や開発でも存在します。
例えば:
- ログ解析で過去の問題を検知し、将来の予防策を講じる
- キャッシュやリプレイによって過去の状態を再現する
- 回顧(ふりかえり)を行うことで、未来の行動方針を設計する
これはまさに「TENET的思考」です。未来(あるべき姿)から逆算して今の行動を設計する、という逆行的発想です。
まとめ:時間は一方向ではない?
『TENET』は、私たちが当たり前と思っている時間の概念に疑問を投げかけます。そしてそれは、システムをどう設計するか、情報をどう扱うかという現実の課題にも通じています。
あなたのプロジェクトや業務にも、「逆行的視点」や「ループ構造」はありませんか?
未来を想定し、過去を再評価し、今の選択を最適化する。そんな思考法が、『TENET』から学べる最も大きな教訓かもしれません。
次回予告(例)
次回は『インセプション』を取り上げ、「多層システムとデバッグの難しさ」についてシステム思考で掘り下げます。